No.332 【読書記録】小さな声を小さなままに 久保田美法著

 こんにちは、けんたです。これからは積極的に読書記録も残していきたいなと考えております。ということで、日本に帰ってきてから最初に読んだ久保田美法先生著の「小さな声を小さなままに」という素敵なタイトルの本の読書記録を書いてみます。うまく書ける自信はないですが、書かないことには始まらないということで不完全ながらも、とにもかくにもやってみようという感じで書きます。それでは、どーぞ!

目次

書籍情報

 まずは書籍の基本情報から

 ・タイトル:小さな声を小さなままに ~私の「福祉心理学入門」から
 ・著者:久保田美法 Kubota Miho
 ・出版社:ナカニシヤ出版
 ・読了日:2026年3月
 ・ジャンル:専門書 心理学

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本を手に取ったきっかけと本の印象

 なぜこの本を手に取ったのか?ということですが、ズバリ私の院生時代の指導教授の本だからです(笑 本当に先生らしい柔らかく温かみのある書籍です。専門書ではありますが、専門家ではない人でも読みやすいと思います。本書を通して福祉と心理の奥深さが伝わってくる、そんな本でした。また学生さんの声をヒントに執筆されているのですが、学生さんの素朴な感想から伝わってくる想いや葛藤、悩み、不安、そして学びがじわっと伝わってきます。ありのままをありのままに捉えるということは非常に難しい試みですが、長年にわたりその難しい試みを続けられている先生の姿が伝わってくる、そんな印象を受けました。

本のあらすじと概要

 この本は、久保田先生が大学で担当されていた「福祉心理学入門」という授業で紹介してきた現代社会で生きる様々な人の小さな声と、それらの声を聴いた学生さんたちの声を折り合わせた”小さな声の*アンソロジー”として説明されています。

*注:アンソロジーとは、異なる作者による作品、または同一作者の異なる作品を集めた作品集のこと。元々はギリシャ語の「花(anthos)」と「集める(legein)」を組み合わせた言葉で、「美しいものを選び集めた」というニュアンスを有する

 章の構成としては「居場所を求めて」「生(なま・せい)の語りに触れる」「エゴの奥にあるもの」「人間の条件」「生きることの不思議」という流れになっており、それぞれをテーマにした概要を説明しつつ、その講義で受けた学生からの「ちいさな声」をもとに現象を紐解いていく、またはありのままみつめてみるという内容です。

 現代社会に生きていると本当に評価をせず、判断をせず、ありのままにするということがいかに難しいかということをママ感じますが、それにチャレンジしている書籍だと思います。そして、「ほー!!なるほど〜」と思ったところが、第四章の「人間の条件」!! これはやっぱり心理の先生っていう感じなんです。読んでいただくとわかるのですが、今の世の中の流れからだとAIやロボットを中心に語られそうな内容を、そうではなくそういった現代テクノロジーが入ってきた現代の生活を受けて人生や老いる、不完全性といった「人間そのもの」を中心に据えて描き出されているように感じます。

 だんだんあらすじと概要から外れてしまいそうなので、ひとまずここまで。そんな書籍です。

心に響いた一節・箇所(引用)

 上でも書いたので、やっぱり私的には第4章が印象に残りました。最近の流れを考えるとAIやロボット工学はこの先、われわれの生活や心とは切り離せない技術になってくると思うし、今まで遠かった分野であるロボット工学などが心理学に一気に近づいてくるのではないかと思うのです。

 おもろいなぁと思ったところについてです。「弱いロボット」という項で書かれているんですが、ゴミを拾えないゴミ箱ロボット、ゴミ箱ロボットがゴミの前まで行って立ち往生している。「ゴミを拾って入れて」って人の手がないとゴミを収集できないという不完全さを備えたロボットが紹介されます。今の現代だと生活を補助して役に立つロボットが広がりを見せているわけで、ルンバに代表されるお掃除ロボットなんかが典型だと思います。が、なんとロボットだけでは完結しないゴミ箱ロボットなんかがあるみたいです。

 ここで重要なのは、その不完全性や立ち往生するという(困り感の表出)が、人にポジティブな感情を生起させ、支援を引き出すというところです。といっても、この文章もね、書きながらですけどね、なんていうのかな一個層が上になってるんですよね。久保田先生が書くともう一つ下の層というのかな。かっこよく言えば現象学的な捉え方、もっとありのままの捉え方でそれを皮切りに福祉や心理について述べられているのが面白いところだと思います。

 そしてとっ散らかり始めていますが、「ロボットの悲しみ」という項を紹介しようかなと思います。この項では、弱いロボットを開発した岡田の書籍を参照したところから始まります。

 公園で胸に抱いている小さなぬいぐるみ型ロボットに「きれいだね」と語りかけながらお花見をしているお婆さん。その光景を目にした岡田は少し複雑な気持ちになる。これでいいのだろうか。何か痛々しさのようなもの、後ろめたさなようなもの、居たたまれなさなようなものを感じる。

 こういった内容から学生さんが感じたことなどをありのままに出してもらうそんな授業です。これを教材に語られた学生さんの言葉が次のもの

 「ロボットに対して、恐れの感情は抱いたことはあったけど、悲しみという感情を持つのは初めての経験かもしれない。けれど「悲しみ」という感情は愛がある感情だと思う。私たちがロボットの発達に対して、怖さではなく、悲しさという気持ちで問題に向き合えば、ロボットとうまく共生できる社会に向かっていけるような気がした。」

  そして、これに対してさらに久保田先生がご自身と学生さんの言葉の中で響いた内容を文章にされているのです。

「悲しみ」という感情は確かにとても大切なものだろう。「恐怖」「怒り」という感情は触れてきたが、「悲しみ」がひらいてくれる新しい世界というものもあるのではないだろうか。
 「恐怖」という感情は、しばしばその相手を「敵」のようにみなし、そこから守ろうとして自らを閉じる。それに対して「悲しみ」は、他者に対してひらかれ、通じ合い、共有される感情である。

 ん〜。深い。学生さんの気づきも現代的に推敲されたものではなく、批判をしようと思えばいくらでもできるものだと思います。しかし、そうではなくあくまでありのまま、素朴な想い、これを肯定しありのままに書籍になっている。これがこの本のオリジナリティでステキなところだと思うわけです。そして、その素朴な学生さんの言葉から、「悲しみが他者に開かれ、通じ合い、共有されうる感情」として捉え直されている。そうかー。悲しみには、愛が含まれている感情で、それは共感を生み、人と人とを繋げる感情なのかと感じた次第です。

まとめ:こんな人におすすめしたい

 ということで、書籍の紹介でした。個人的にこの本をお勧めしたいのは、ズバリ中堅の心理士!! つまり私(笑 ある程度現場に出て働いているとこういう時はこうすればいい、とか、こういうパターンはこうだなとか、ここは心理教育やろ! みたいな推測をするようになっていると思うのです。そんな時に、あ、そうだよな。評価したり判断したりせずにありのままに素朴に捉える心理臨床も大事だよなって、初心を思い出させてくれる本だったと思います。

 内心ちょっとドキッとしました(笑 精進いたします。

 おわり。

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